1 業種
卸売業・小売業
2 事案の概要
ご相談企業様から、顧問弁護士である当方に、退職した従業員から、未払い残業代請求を受けたとのことで、その対応についてご相談いただきました。
ご相談企業様では、従業員に対し、残業代の意味合いで、「職務手当」を毎月定額で支給していました。
しかし、仮に訴訟となった場合に、「職務手当」が裁判所に固定残業代(定額残業代)として有効と認めてもらえる可能性は、非常に低いと考えられる事案でした。
一方で、「職務手当」を固定残業代(定額残業代)と認めない前提であったとしても、計算上の2年分(※)の残業代は合計10万円~20万円程度であり、示談交渉による早期解決が十分に可能と考えられる事案でした。
※2020年3月以前に発生した残業代の時効は2年でしたが、2020年4月以降に発生する残業代の時効は3年となります。
3 当事務所の対応
当事務所の弁護士は、ご相談企業様も早期解決を希望されていたことから、速やかに、相手方(退職した従業員)に提示する残業代計算書と、相手方と取り交わす示談書の文案を作成し、ご相談企業様にお渡しいたしました。
ご相談企業様は、すぐに、当事務所の弁護士が作成したとおりの残業代計算書と示談書を相手方に送付し、示談書の取り交わしに成功しました。
そのうえで、ご相談企業様は、示談書で取り決めた残業代10万円程度を相手方の指定口座に送金し、当事務所へのご相談から1か月足らずでの早期解決となりました。
その後、当事務所の弁護士は、ご相談企業様に対し、今後の同種の紛争の発生を防止するために、労働時間の管理・抑制、法的に有効と認められるだけの要件を整えた固定残業代(定額残業代)の制度の導入など、考えられる対策をご提案させていただきました。
4 対応のポイント
退職した従業員からの未払い残業代請求は、近年、増加している労使トラブルです。
数百万円にのぼる請求を受け、訴訟が提起されることが少なくありません。
一方で、本件のような少額の事案では、示談交渉による早期解決を図ることが得策と言えるケースもあります。
そして、現時点で実際に発生している法的紛争の解決はもちろんですが、将来的に同種の法的紛争を発生させないための対策を講じていくことも、とても大切です。