はじめに
企業・法人では、多数の従業員を雇用するのが通常であり、労使関係の法的トラブルが発生することも少なくありません。
労使関係に基づく損害賠償の問題は、企業・法人が直面し得る典型的な法的トラブルです。
損害賠償の問題が発生する類型
労使関係に基づく損害賠償は、解雇、本採用拒否、内定取消、懲戒処分、人事異動・配置転換が不当であるとして、請求を受けることがあります。
解雇、本採用拒否、内定取消、懲戒処分には、十分な事実関係の裏付けと処分の正当性が要求されます。
人事異動・配置転換は、人事権の濫用に当たるものであってはなりません。
また、退職強要やパワハラ・セクハラなどのハラスメントを受けたとして、損害賠償の請求を受けることがあります。
企業・法人が労使関係に基づく損害賠償を受ける法的根拠は、不法行為責任(民法709条。故意または過失によって他人の権利・利益を侵害した場合の損害賠償責任)および使用者責任(民法715条。従業員が業務の執行について不法行為を行った場合に雇用主が損害賠償責任を負うこと)に基づくものであることが通常です。
また、企業・法人の代表者の行為が問題となる場合には、会社法350条等(同条では、会社は、代表取締役がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う旨が定められています。
会社以外の法人についても、各法律で同様の規定があります)が根拠となります。
労使関係に基づく損害賠償の金額としては、事案によって異なりますが、例えば解雇やパワハラでは数十万円から300万円程度までの慰謝料を認容した裁判例が多いと見受けられます。
また、強度のパワハラが繰り返され、自殺の結果を招いた場合など、数千万円単位の損害賠償を命じた裁判例もあります。
なお、労働災害(労災)による損害賠償の問題については、こちらをご覧ください。
●労働災害(労災)による損害賠償
労使関係に基づく損害賠償の問題が発生した場合には、そもそも損害賠償の請求が認められるかどうか、請求を受けた損害賠償の金額が妥当かどうかなど、専門的な検討・判断が必要となることも多いですので、まずは弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
損害賠償以外の問題
解雇、本採用拒否、内定取消、懲戒処分、人事異動・配置転換、退職強要に基づく退職が不当(無効)とされれば、その従業員が従前の地位に復するという問題があります。
解雇、本採用拒否、内定取消、退職強要に基づく退職が不当とされれば、従業員としての地位を確保することを意味します。
また、懲戒処分、人事異動・配置転換が不当とされれば、従前の職位や勤務地に戻るとか、給与の減額が取り消されることを意味します。
解雇、本採用拒否、内定取消、懲戒処分、人事異動・配置転換、退職強要が問題となる事案では、従前の地位を暫定的に確保することを求める仮処分が、裁判所に申し立てられることがあります。
そして、その従業員が元の地位に復するとなれば、企業・法人としては、復帰後の対応に苦慮させられるとか、未払給与・差額給与の支払継続を余儀なくされるなどの負担を強いられます。
あるいは、企業・法人側が敗色濃厚な中で、その従業員に何とか退職してもらうために、高額の解決金の支払が必要となるなど、難しい判断を迫られることもあります。
労使関係に基づく損害賠償の問題は、損害賠償の責任の有無や金額の面だけではなく、複雑な問題を含んでいることも多いため、弁護士のサポートのもとに対応されることをお勧めいたします。
弁護士にご相談ください
労使関係に基づく損害賠償の問題についてお困りの企業・法人様がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談ください。
損害賠償の事案では、損害賠償の請求の可否、損害賠償額の算出、示談交渉・訴訟等の対応など、複雑な問題が多々あります。
当事務所の弁護士は、これまでに、損害賠償の問題を多数取り扱ってきた実績がございますので、ぜひ一度、ご利用いただければと存じます。
なお、労務問題については、こちらもご覧ください。
●労務問題
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