弁護士・木村哲也
代表弁護士
主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。
はじめに
店舗・事務所等のテナントが賃料を滞納した場合、建物の所有者としては、いきなり建物の明渡しに動くのではなく、まずは賃料の回収による解決を試みることとなるでしょう。
しかし、それでも賃料の滞納が解消しなければ、建物の所有者としては、賃貸借契約の解除と建物の明渡しを求めていくこととなるでしょう。
今回のコラムでは、賃料を滞納するテナントへの対処法として、賃料の請求の方法と、賃貸借契約の解除による建物明渡請求の手順について、ご説明させていただきます。
賃料の請求について
テナントが賃料を滞納した場合、次のような方法で賃料を請求し、解決を試みるようにしましょう。
電話・書面による賃料の請求
まずは口頭や書面により賃料の支払を求めます。
賃料の滞納が判明したら、できる限り早くテナントへ連絡するようにしましょう。
単に振込手続を忘れていたり、口座の残高不足に気付かずに引き落としができなかったりしただけの可能性もあります。
内容証明郵便による賃料の請求
口頭や書面により請求をしても賃料が支払われなければ、内容証明郵便を送付して支払を請求しましょう。
内容証明郵便には、滞納家賃の金額、支払の期限、期限までに支払がなければ賃貸借契約を解除する旨などを記載します。
内容証明郵便を利用することにより、送付した書面の内容や発送日・配達日の記録が残りますし、テナントに対してプレッシャーを与え、滞納家賃の支払に繋がる可能性もあります。
賃貸借契約の解除による建物明渡請求について
賃料の回収の努力をしても滞納が解消しなければ、次のような手順で賃貸借契約の解除と建物の明渡しを求めていくこととなるでしょう。
①賃貸借契約の解除通知
建物の明渡しを求めるためには、賃貸借契約を解除することが前提となります。
この点、賃貸借契約の解除が有効となるためには、一定期間の賃料の滞納により賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されたと言えることが必要となります。
どの程度の期間の賃料滞納をもって信頼関係が破壊されたと言えるかは、個々の事案ごとの判断となりますが、おおむね3か月程度を基準とすることが多いです。
賃貸借契約を解除する場合には、賃料を滞納するテナントに対し、内容証明郵便により、賃貸借契約を解除する旨の通知書を送付します。
内容証明郵便を利用するのは、賃貸借契約を解除する意思表示を適法に行ったことの証拠を残すためです。
②建物明渡しの交渉
賃貸借契約が有効に解除されれば、テナントは建物を使用する権利がなくなりますから、建物の明渡しを求めることができます。
建物の明渡しに向けた任意の話し合いをすることにより、民事訴訟(裁判)の手続を行わずに解決できるケースもあります。
なお、テナントの同意なく勝手に建物内を片付け、勝手に鍵を交換するなどして建物の明渡しを強行すれば、「自力救済」として違法と評価されますので注意が必要です。
自力救済をしてしまうと、窃盗罪・器物損壊罪・建造物侵入などの罪に問われるおそれがありますし、テナントから損害賠償請求を受けるリスクもあります。
③占有移転禁止の仮処分
テナントが任意に建物の明渡しに応じない場合には、建物の明渡しを求める民事訴訟を裁判所に提起することとなります。
しかし、もしテナントが建物を無断転貸し、建物の占有を第三者に移転してしまえば、テナントに対する明渡しの判決が下されても、その判決が無意味なものとなってしまいます。
なぜなら、明渡しを命じる判決は、現に建物を占有する者に対して下されなければ、強制力を持たないのが原則であるためです。
そこで、裁判所に「占有移転禁止の仮処分」を申し立てるという対策があります。
占有移転禁止の仮処分とは、裁判所からテナントに対し、建物の占有を第三者に移転することを禁止する命令を発してもらう手続のことを言います。
占有移転禁止の仮処分が出されれば、仮に占有がテナントから第三者へ移転されたとしても、テナントに対する明渡しの判決をもって、後述する強制執行を行うことが可能となります。
テナントが建物の占有の移転により明渡しの妨害をしてくるおそれがある場合には、裁判所に占有移転禁止の仮処分を申し立てるのがよいでしょう。
なお、占有移転禁止の仮処分の手続を行った時点で、テナントがこれ以上の抵抗を諦め、建物の明渡しに応じてくるケースもあります。
④建物明渡請求訴訟
テナントが任意に建物の明渡しに応じなければ、建物の明渡しを求める民事訴訟を裁判所に提起します。
裁判所が建物の明渡しを認めれば、テナントに対し、建物から退去して建物を明け渡すことを命じる判決が下されます。
民事訴訟の手続は非常に複雑で手間がかかりますが、専門家である弁護士に対応をご依頼いただけばスムーズに手続を進めることが可能です。
建物明渡請求訴訟では、和解という形で任意に建物を明け渡してもらうことにより決着することもありますし、建物の明渡しを命じる判決が下されることによりテナントが明渡しに応じてくるということもあります。
⑤建物明渡しの強制執行
建物明渡請求訴訟により明渡しを命じる判決が下されたにもかかわらず、テナントが明渡しに応じてくれない場合には、裁判所に強制執行を申し立てることになります。
建物の明渡しを命じる判決が出されたからといって、テナントの同意なく勝手に建物内を片付け、勝手に鍵を交換するなどして建物の明渡しを強行することはできません。
このような「自力救済」をすれば、建物の所有者が罪に問われたり、テナントから損害賠償請求を受けたりするリスクがあります。
合法的に建物の明渡しを実現するためには、裁判所で強制執行の手続をとる必要があるのです。
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当事務所では、賃料を滞納するテナントに対する建物明渡請求など、対応実績が豊富にございます。
賃料を滞納するテナントへの対応についてお困りのことがありましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2023年5月19日
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