この記事を書いた弁護士
弁護士・畠山賢次
八戸シティ法律事務所 在籍
主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。
はじめに
従業員が会社の業務命令・指示に従わないような場合、会社の業務に支障をきたしかねず、円滑に組織を運営することが困難となってしまいます。
そこで、今回のコラムでは、このような会社の業務命令・指示に従わない従業員への対応について、ご説明させていただきます。
従業員の誠実労働義務
従業員は、労働契約によって発生する労働義務を、その債務の本旨に従って履行しなければなりません。
労働契約により発生する労働義務には、労働契約の合意内容の枠内で、労働の場所・内容などについての使用者の指揮に従った労働を誠実に履行しなければならないという、いわゆる誠実労働義務が含まれています(労働契約法3条4項)。
そのため、従業員が誠実労働義務に違反した場合には、債務不履行ということとなります。
会社の業務命令・指示の範囲
上記のとおり、従業員は誠実労働義務を負いますが、当然のことながら、会社は、労働契約を締結した従業員に対し、どのような業務命令・指示でもできるわけではありません。
会社の業務命令・指示は、個別の労働契約の内容の枠内で、従業員が業務を行うにあたり必要な範囲に限られます。
また、従業員の労働契約の内容は、個別の労働契約に加えて、会社における就業規則において定められている事項も加味されて判断されることとなりますが、労働契約の内容から判断して、業務命令・指示が合理的かつ相当と認められるものである必要があります。
会社の業務命令・指示に従わない従業員への対応
会社の適法な業務命令・指示に対して、従業員が従わない場合には、
注意・指導
↓
懲戒処分
↓
退職勧奨
↓
解雇
というように、各段階を経たうえで次の処分を検討して対応していくのが望ましいでしょう。
このように段階を経て対応するのが望ましいのは、注意・指導をせずに、直ちに懲戒処分や解雇をしてしまうと、本人に違反行為を改善する機会が与えられなかったことなどが理由となって、処分の効力が否定されてしまう可能性があるからです。
以下では、各対応について個別に留意すべきポイントをお話しいたします。
(1)注意・指導
注意・指導を行うにあたっては、
◎業務命令・指示に従わなかった場合には、その都度、速やかに注意・指導を実施する
◎注意・指導にあたっては、従業員が従わなかった業務命令・指示を具体的に指摘する
◎従業員本人に対し、弁明の機会を与える
◎注意・指導の日時・内容をメールや紙媒体で記録に残す
ということに留意して行っていただくのがよいでしょう。
また、あくまで注意・指導は、従業員の業務命令・指示に従わない行動を改善させることを目的として行うものですので、従業員に具体的な改善方法を考えてもらえるように心がけるべきです。
そして、当然のことながら、注意・指導は、業務命令・指示違反に対して行われるものですので、違反行為に関係のない事項を無闇に取り上げるべきではありませんし、人格を否定したり名誉を毀損したりするような言動は、絶対にすべきではありません。
【関連コラム】
●もめないための問題社員の指導方法を弁護士がわかりやすく解説
(2)懲戒処分
注意・指導を実施しても従業員の業務命令・指示に従わない言動が改善されない場合には、懲戒処分を検討していくこととなります。
懲戒処分を有効に行うためには、
◎懲戒の理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則上明記されていること
◎従業員の行為が就業規則上の懲戒事由に該当すること
◎懲戒処分の程度が相当なものであること
◎就業規則上規定された手続が実施されていること
の各要件を満たすことが必要です。
また、1回の業務命令・指示違反行為に対して、複数回の懲戒処分をすることはできませんので、この点についても留意しておくべきでしょう。
懲戒処分については、次の関連ページをご参照ください。
【関連ページ】
●懲戒処分
(3)退職勧奨
退職勧奨とは、会社が従業員に対し、退職を促すことを言います。
解雇が従業員の同意なく一方的に雇用契約を終了させることを言うのに対し、退職勧奨は従業員に退職することを了解してもらったうえで、退職届を提出してもらう方法です。
会社が退職勧奨を行うこと自体は、違法とされるものではありません。
もっとも、長時間・多数回の退職勧奨や、退職させることを目的とした配置転換・仕事の取り上げは、違法と評価される危険があるので、注意すべきでしょう。
退職勧奨については、次の関連ページをご参照ください。
【関連ページ】
●退職勧奨
(4)解雇
現在の日本の労働法においては、会社が従業員を解雇するのは容易なことではありません。
従業員の解雇にあたっては、解雇の要件を満たしているかどうか、労働審判や訴訟になった場合に解雇が有効と認められそうかどうか、解雇が無効となった場合のリスクなどを踏まえて、慎重に検討・判断していく必要があります。
解雇の種類および各解雇における具体的な要件については、次のページをご参照ください。
【関連ページ】
●解雇
問題社員対応の書式
本サイトでは、問題社員対応に活用できる様々な書式をご用意しております。
詳しくは、以下のコラム記事をご参照ください。
【関連コラム】
●問題社員対応における指導書・注意書・懲戒処分通知書・退職合意書・解雇通知書等の書式
●問題社員対応にも使える本採用拒否・試用期間の延長・雇い止め・内定取消・人事異動・配置転換の書式
弁護士にご相談ください
業務命令・指示に従わない従業員への適切な対応方法は、具体的な事情・状況によって異なります。
業務命令・指示に従わない従業員についてお悩みの企業・法人様は、まずは労務問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
記事作成弁護士:畠山賢次
記事更新日:2022年10月26日
当事務所の問題社員に対する注意指導・懲戒処分サポートの流れ
問題社員に対する注意指導・懲戒処分について当事務所にご相談・ご依頼いただく場合の解決までの流れは、次のとおりです。
①ご相談
弁護士が対象となる問題社員の業務内容・問題点、これまでの対応などを詳しくお聞きし、今後の対応方針を検討・提案いたします。
②ご依頼
対応方針が決まったら、ご希望により弁護士に注意指導・懲戒処分のサポート業務をご依頼いただきます。
③お打ち合わせ
会社担当者様と弁護士とで具体的な注意指導・懲戒処分の内容・段取りについてお打ち合わせをし、当日の対応に備えます。
弁護士が必要に応じて注意書・指導書・懲戒処分通知書などの書面を作成いたします。
④同席対応
弁護士が会社を訪問し、対象となる問題社員との面談に同席いたします。
面談の席において、弁護士が注意指導・懲戒処分の言い渡しをサポートいたします。
当事務所の問題社員に対する退職勧奨・解雇サポートの流れ
問題社員に対する退職勧奨・解雇について当事務所にご相談・ご依頼いただく場合の解決までの流れは、次のとおりです。
①ご相談
弁護士が対象となる問題社員の業務内容・問題点、これまでの対応などを詳しくお聞きし、今後の対応方針を検討・提案いたします。
②ご依頼
対応方針が決まったら、ご希望により弁護士に退職勧奨・解雇のサポート業務をご依頼いただきます。
③お打ち合わせ
会社担当者様と弁護士とで具体的な退職勧奨・解雇の内容・段取りについてお打ち合わせをし、当日の対応に備えます。
弁護士が必要に応じて退職合意書・解雇通知書などの書面を作成いたします。
④退職勧奨のサポート
弁護士が会社を訪問し、退職勧奨の面談に同席いたします。
面談の席において、弁護士が退職強要とならないようにサポートし、退職の同意が得られた場合には、退職合意書の取り交わしを行います。
⑤解雇のサポート
退職勧奨をしても退職の同意を得られず解雇に踏み切る場合には、弁護士が面談の席に同席し、解雇の言い渡しをサポートいたします。
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