弁護士・木村哲也
代表弁護士

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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1 はじめに

工場・工事現場・飲食店・その他店舗等では、悪臭・異臭に関するクレームを周辺住民等から受けることがあります。

今回のコラムでは、悪臭・異臭に関するクレーム対応のポイントをご説明いたします。

2 受忍限度論と悪臭防止法

周辺住民等から悪臭・異臭に関するクレームを受けた場合、まずはその臭気が法的に問題のあるものかどうかが問題となります。

この点、臭いを発することが一律に違法とされるわけではなく、社会生活において受忍すべき限度を超える場合に違法となる、という考え方が一般的にとられています。
この考え方のことを、「受忍限度論」と言います。

そして、工場・工事現場・飲食店・その他店舗等の事業場が発する悪臭を規制する法律として、「悪臭防止法」があります。
悪臭防止法では、都道府県知事または市長が悪臭の規制地域を指定し(悪臭防止法3条)、悪臭の規制基準を定めるものとされています(悪臭防止法4条)。
また、市町村長による改善勧告・改善命令(悪臭防止法8条)および命令違反に対する罰則(悪臭防止法24条)、市町村長等に対する報告・検査(悪臭防止法20条)および虚偽報告・検査拒否等に対する罰則(悪臭防止法28条・29条)などが定められています。

悪臭防止法に基づく規制基準に違反していれば、受忍限度を超える悪臭を発しているものとして、違法と判断される可能性が高いでしょう。

3 悪臭の規制基準

例えば八戸市では、八戸市悪臭発生防止指導要綱が制定され、一部の工業専用地域を除くほぼ全域が悪臭防止法に基づく規制地域に指定されています。

【悪臭防止法に基づく規制】
①敷地境界線における規制基準(1号基準)
アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素など22の特定悪臭物質の濃度による規制基準値が定められています。
②排出口における規制基準(2号基準)
特定悪臭物質のうち13種(アンモニア、硫化水素、トリメチルアミン)が規制対象であり、流量による規制基準値が定められています。
③排出水中における規制基準(3号基準)
特定悪臭物質のうち4種(メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル)が規制対象であり、濃度による規制基準値が定められています。

【八戸市悪臭発生防止指導要綱に基づく規制】
悪臭防止法では、特定悪臭物質の物質濃度規制が採用されています。
しかし、低濃度物質の色々な臭いが混ざった複合臭や指定悪臭物質以外の物質による悪臭もあり、悪臭防止法では対応できない場合もあります。
そこで、八戸市悪臭発生防止指導要綱では、住居地域、商業地域、工業地域などの区分に応じ、敷地境界線、排出口、排出水における臭気指数による指導基準が定められています。

悪臭・異臭の違法性の判断は、臭気の濃度、工場・店舗等の構造、当該周辺住民の住居等との位置関係などが判断要素になると考えられます。
悪臭防止法および都道府県等の規制基準と違法性(受忍限度を超えるかどうか)の判断は必ずしも一致するものではありませんが、規制基準を遵守しているかどうかという点は重要な判断要素であると考えられます。

違法な悪臭・異臭であると認められる場合、裁判により臭気の排出差止および慰謝料等の損害賠償を命じられるおそれがありますので、注意が必要です。

4 悪臭・異臭に関するクレームがあったら

周辺住民等から悪臭・異臭に関するクレームを受けた場合には、排出される臭気レベルの測定および臭気排出に関する改善策を検討することになります。

ほとんど言いがかりのようなクレームであれば、毅然とした態度で要求を拒否するのが基本路線となりますが、企業としては周辺住民等の地域との調和・共生のもとに事業を遂行するという姿勢も必要です。

悪臭防止法および都道府県等の規制基準を満たすというだけで、理不尽なクレームと断じて切り捨てるのではなく、可能な限りの臭気対策と誠実な説明により理解を求めていくことが大切であると考えられます。

そして、万が一裁判等のトラブルになった場合に備えて、悪臭防止法および都道府県等の規制基準を遵守するとともに、普段から遵守していることの記録・証拠を残しておくことも重要です。

5 弁護士にご相談ください

当事務所では、クレーム対応に関する対応経験・解決実績が豊富にございます。

クレーム対応に関するアドバイス、周辺住民等に対する説明の同席対応、代理人としてのクレーム窓口対応など、様々なサポートが可能です。

悪臭・異臭に関するクレームでお困りの企業様がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2024年7月26日

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