弁護士・山口龍介
八戸シティ法律事務所 所長
主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。
1 はじめに
会社の指示・業務命令に従わない社員、遅刻・早退や欠勤を繰り返す社員、協調性を欠く社員、能力不足の社員、トラブルを起こす社員(ハラスメントをする、横領をする、SNSトラブルを起こす)など、いわゆる問題社員への対応に苦慮している企業・法人様は多く、当事務所にも多くのご相談が寄せられます。
問題社員を放置しておくと、問題行動がエスカレートして職場環境が悪化したり、職場内の人間関係が壊れたりして、他の社員のモチベーションやモラルの低下につながることが懸念されます。
例えば、協調性がない社員は、他の社員や顧客・取引先とのトラブルを発生させることがあり、周囲への悪影響が非常に大きいと言えます。
また、ハラスメントは、被害者社員の人格を傷付け、仕事の意欲・自信を喪失させ、メンタルヘルスの悪化にも繋がりますし、被害者社員だけでなく、被害を見聞きした周囲の社員についても、仕事の意欲が低下し、会社全体の生産性の悪化にも繋がり得るものです。
さらに、SNSトラブルでは、会社の労働環境等について誤解を招きかねない投稿がなされた場合には、会社の信用が低下してしまうおそれがあります。
いずれの場合であっても、問題社員を放置することは考えられず、何らかの対応をすべきですが、会社としては、いきなり懲戒処分を下すのではなく、まずは面談を行い、事情聴取・事実確認をしたり、指導・注意をしたりすることになります。
もっとも、この面談の際の対応次第では、後に更なる問題へ発展することがあるため、十分に注意する必要があります。
ここでは、問題社員と面談をする場合のNG対応と注意点について、詳しくご説明いたします。
2 面談時のNG対応と注意点
(1)長時間の話をしない
NG対応と注意点の1つ目は、「長時間の話をしない」ということです。
指示・業務命令に従わなかったり、遅刻・早退や欠勤を繰り返したり、職場内で何らかのトラブルを起こした場合でも、面談で1時間以上も話をするのは適切ではありません。
特に、注意・指導の範囲を超えて、叱責が長時間続いた場合は、パワーハラスメントと判断されるリスクもあります。
NG(不適切、違法)な対応かどうかの大まかな基準としては、面談の目的に照らして、その対応に必要性・相当性が認められるか、ということを考えるとよいでしょう。
例えば、事情聴取・事実確認に時間を要した場合や、その社員の言い分を聞くことに時間を要した場合には、全体で面談時間が1時間を超えたとしても、必要性・相当性があるとして、違法ということにはならないでしょう。
他方で、注意・指導だけであれば、1時間も必要とは言えず、30分以内が望ましいと考えられます。
面談の目的に照らした必要性・相当性を踏まえて、あらかじめ面談時間を設定しておくことが、リスク回避として大切です。
(2)大人数で面談をしない
NG対応と注意点の2つ目は、「大人数で面談をしない」ということです。
事情聴取・事実確認で問題を追及しようとして、その思いだけが先行して、5名以上の上司等で面談をしてしまうと、そのことだけで威圧的であるとされるリスクがあります。
ここでも、大まかな基準として、対象となる社員の状況等を踏まえて、その人数等に必要性・相当性が認められるか、ということを考えるとよいでしょう。
会社側としては、通常は2~3名程度で行うのが適切です。
また、暴力的な言動が見られる問題社員に対しては、3~4名で対応することも考えられます。
他方で、会社側が1名ということは、避けた方が良いです。
後日、「面談で上司から暴力的な言動をされた」などと主張されても反論できないおそれがありますし、問題社員が暴力的な言動に出てきた場合に止めることができない場合があるからです。
(3)決めつけない
NG対応と注意点の3つ目は、「決めつけない」ということです。
事情聴取・事実確認でも、注意・指導でも、問題社員本人の言い分を聞くことは、とても重要です。
懲戒処分をする場合には、本人に弁明の機会を与えることが必須とされていることからも、まずは、問題社員本人の話を聞く必要があります。
そのため、会社側は、何があったかについて、決めつけず、冷静かつ淡々と事実の確認を行うことからスタートするのが良いでしょう。
そして、たとえ本人が不合理な弁解をしても、まずはそのまま言い分を聞くことが大切です。
(不合理な弁解は、その事自体が反省をしていない証拠として、問題社員本人にとって不利な事情となります。)
このことに関連して、注意・指導の場面では、主観的な評価ではなく、客観的な事実を示して行うことも大切です。
当然のことながら、決めつけを超えて、注意・指導とは関係のない事項を無闇に取り上げるべきではありませんし、人格を否定したり名誉を毀損したりするような言動は、絶対にすべきではありません。
(4)大声で話さない・感情的にならない
NG対応と注意点の4つ目は、「大声で話さない・感情的にならない」ということです。
問題社員は、自分の考えを曲げない人物も多く、注意・指導による改善が困難なことも少なくありません。
不合理な弁解をされたり、ああ言えばこう言うというような態度を繰り返されたりすると、面談対応を行っている側が感情的になってしまいかねない場面は意外とよくあります。
このような場面でも、あくまで平静を装い、淡々と面談を進めていくことが望ましいです。
感情的にならずに冷静に進めるためには、何のための面談なのかということを、常に意識して対応することもポイントです。
このことに関連して、面談は、対象となる社員によって録音されている可能性があります。
実際に裁判では、「面談で上司から大声で怒鳴られた」「業務とは関係の無いことにまで言及して叱責してきた」と主張されて、証拠として録音データが提出されることもあります。
録音されているという意識を持って面談に対応すると、比較的冷静に対応できると思われます。
(5)録音する
NG対応と注意点の5つ目は、「録音する」ということです。
前述のとおり、社員側で録音していて、それが裁判で証拠として提出されることが多くなっていますが、会社側でも録音をしておく必要があります。
これは、面談内容を書面として記録しているか否かに関わらず、録音はしておいた方が良いです。
録音をする場合は、社員に対して、録音をすることは告げておいた方が無難です。
告げなかった場合に証拠として使えないということにはなりませんが、告げることのデメリットがそれほどない限りは、告げておいた方が適切・丁寧な対応であると考えられます。
なお、録音をした場合でも、いつ、どこで、誰が参加した面談かなど、録音内容からは分からないことは、書面で残しておくことは必須となります。
(6)他の従業員の前で責をしない
NG対応と注意点の最後は、「他の社員の面前で叱責しない」ということです。
例えば朝礼などの場において、他の社員の面前で叱責するといった対応は、違法となることがあります。
他の社員の面前で叱責することは、注意・指導として必要性も相当性もありませんので、その方法自体が違法とされるわけです。
他の社員をCcに付けて、本人宛のメールで叱責することも同様に違法となることがありますので、注意が必要です。
別室に呼ぶなどして、周囲からは面談内容が分からない(見聞きできない)状態で面談することになります。
3 弁護士にご相談ください
問題社員との面談をはじめとする問題社員への対応について、お困りの企業・法人様がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
特に、顧問契約を締結させていただいている企業・法人様については、連絡・情報共有を密にしながら、迅速・柔軟な対応が可能となっており、大変ご満足をいただいております。
ご相談では、弁護士が対象となる問題社員の業務内容・問題点、これまでの対応などを詳しくお聞きし、今後の対応方針を検討・提案いたします。
ご希望により弁護士に注意指導・懲戒処分のサポート業務をご依頼いただいた場合には、具体的な注意指導・懲戒処分の内容・段取りについてお打ち合わせをし、必要に応じて注意書・指導書・懲戒処分通知書などの書面を作成した上で、当日の面談対応に備えます。
そして、面談の当日は、弁護士が会社を訪問し、対象となる問題社員との面談に同席し、弁護士が注意指導・懲戒処分の言い渡しをサポートいたします。
このように、当事務所では、問題社員との面談をはじめとする問題社員への対応など、地域の企業・法人様が抱える法的課題の解決のサポートに注力しております。
お困りの企業・法人様は、ぜひ一度、当事務所にご相談いただければと存じます。
記事作成弁護士:山口龍介
記事更新日:2024年9月20日
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