弁護士・神琢磨
八戸シティ法律事務所 在籍
主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。
1 はじめに
2024年5月15日、運送業に関する法律である、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(以下、「流通業務総合効率化法」といいます。)及び貨物自動車運送事業法について、改正法が公布されました。
このコラムでは、流通業務総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正について解説いたします。
2 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法とは
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法とは、それぞれ、運送業に関する事項を定めた法律です。
貨物自動車運送事業法は、輸送の安全の確保及び貨物自動車運送事業の健全な発展を目的とする法律であり、貨物自動車運送事業について、許可制などの基本的な事項を定めています。
流通業務総合効率化法は、流通業務の総合化及び効率化の促進を図る法律であり、流通業務総合効率化事業を認定し、これを支援するといった事項が定められています。
なお、流通業務総合効率化法については、改正により名称が「物資の流通の効率化に関する法律」に変更となります。
3 概要と法改正の目的と背景
今回の法改正の背景にあるのは、まず、運送業の2024年問題です。
2024年問題とは、働き方改革関連法により、2024年4月1日から、運送業に時間外労働の上限規制が適用されることに伴って発生する様々な問題の総称をいいます。
運送業とはその性質上、時間外労働が発生しやすい業種であり、働き方改革のための規制が必要であるとはいえ、これによる物流の停滞が懸念されます。
そこで、物流に関するいくつかのポイントを見直し、物流の持続的な成長を図るのが法改正の目的です。
加えて、軽トラック運送業において死亡・重傷事故が急増していることから、軽トラック事業者についての規制的措置が定められました。
4 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の施行スケジュール
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正については、2024年5月15日に公布がなされました。
具体的な施行日については、一部例外はあるものの、公布の日である2024年5月15日から1年を超えない範囲で政令で定める日とされています。
そのため、2025年5月15日までには改正法が施行されることになります。
5 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法について注目すべきポイント
(1)荷主・物流事業者に対する規制的措置
流通業務総合効率化法の改正により、荷主(発荷主・着荷主)、物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)について、物流効率化のために取り組むべき措置を講ずる旨の努力義務が定められました。
物流効率化のために取り組むべき措置というのは、運転者の荷待ち時間の短縮や、1回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るためのものです。
具体的には、パレットの使用により荷役を効率化することや、荷役が集中しないような貨物の受け渡しの日時の指定などが想定されています。
これらの措置については、国が判断基準を策定し、これに基づく助言・指導を行います。
また、一定規模以上の事業者は特定事業者に指定されます。
特定事業者は、中長期的な計画の策定や定期の報告が義務付けられることに加え、物流効率化のために取り組むべき措置の実施状況が判断基準に照らして著しく不十分な場合は、勧告や、勧告に従わなかった場合の公表や命令を受けることになります。
そして、特定事業者のうち、荷主については、物流統括管理者の選任も義務付けられます。
(2)トラック事業者の取引に対する規制的措置
トラック事業者については、貨物自動車運送事業法の改正により、元請け・下請け等の取引の適正化に関する規制的措置が新設されます。
まず、元請け事業者について、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成が義務付けられます。
また、運送契約の締結等に際し、提供する役務の内容やその対価(付帯業務料、燃料サーチャージ等を含む。)等について記載した書面の交付が義務付けられます。
加えて、運送事業者が他の運送事業者に下請けに出す行為について、その適正化のための努力義務が課されます。
そのうち、一定の規模を超える事業者については、適正化に関する管理規定の作成や責任者の選任が義務付けられます。
(3)軽トラック事業者に対する規制的措置
軽トラック事業者については、貨物自動車運送事業法の改正により、安全性の向上のための規制的措置が新設されます。
まず、安全確保に関する業務を行うための管理者の選任が義務付けられ、この管理者は、安全管理のための講習を受けなければならないものとされます。
また、これまで軽トラック事業者の事故報告や安全確保命令に関する情報等は、国土交通省のホームページにおける公表の対象外でしたが、これらが対象として追加されました。
6 法改正を迎えるにあたって企業が注意すべきポイント
今回の法改正については、運送業者に新たに義務付けられる事柄も存在することから、施行後に混乱を生じないよう、あらかじめ義務の内容を把握し、準備しておくことが重要でしょう。
また、流通業務総合効率化法に関しては、国の策定する判断基準に注意を払っていく必要があります。
7 弁護士にご相談ください
今回の法改正は、2024年問題とも関連する重要なものであり、施行前に十分な準備をしておく必要があるものと考えられます。
法改正に遅れずに対応していくためには、法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めいたします。
記事作成弁護士:神琢磨
記事更新日:2024年9月30日
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