弁護士・木村哲也
代表弁護士

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1 はじめに

近年、副業(ダブルワーク)を希望する労働者、および副業を行っている労働者が増加傾向にあります。

副業をすることにより労働時間が増えれば、残業代(割増賃金)の発生が問題となります。
今回のコラムでは、副業と割増賃金の問題について、解説いたします。

2 副業と残業代の発生

労働基準法38条1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定められています。
これは、事業主(会社)を異にする場合も含まれます。

したがって、例えば、本業としてA社で8時間働いたあと、副業としてB社で3時間働けば、これらを通算すると副業の3時間は法定労働時間を超えるため、残業代(割増賃金)が発生することとなります(なお、時間外労働をさせるB社では36協定の締結が必要です)。

ただし、副業がフリーランス・個人事業主として働いている場合には、副業については労働基準法が適用されないため、労働時間の通算・割増賃金の発生はありません(なお、業務委託の形式をとっていたとしても、実態が労働者であれば労働基準法の適用を受ける可能性があります)。

また、有給休暇を取得した場合には、実際には労働をしていないため、労働時間が通算されることはありません。
そして、管理監督者に当たる場合にも、労働基準法の労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないため、労働時間が通算されることはありません(ただし、管理監督者の認定ハードルが高いことには注意が必要です)。

【関連コラム】
●「管理職だから残業代を支払わない」という取り扱いは危険
●管理職・管理監督者からの残業代請求への対応

3 残業代の支払義務者

副業による残業代が発生する場合に、本業・副業どちらの事業主が残業代(割増賃金)を支払うのか?という問題があります。

この点、原則として、後から労働契約を締結した事業主に割増賃金の支払義務があります。
ただし、通算した労働時間が法定労働時間を超える認識がありながら労働時間を延長する場合には、先に労働契約を締結した事業主に割増賃金の支払義務が発生します。

したがって、例えば、先にA社と労働契約を締結し8時間の所定労働時間で働く労働者が、新たにB社と労働契約を締結し3時間の所定労働時間で働く場合、B社が割増賃金の支払義務を負います。

一方で、例えば、先にA社と労働契約を締結し4時間の所定労働時間で働く労働者が、新たにB社と労働契約を締結し4時間の所定労働時間で働くこととなったところ、A社で労働時間を1時間延長して5時間働かせれば、A社・B社の通算した労働時間が法定労働時間を超えるため、A社が割増賃金の支払義務を負います。

なお、例えば、先にA社と労働契約を締結し3時間の所定労働時間で働く労働者が、新たにB社と労働契約を締結し3時間の所定労働時間で働くこととなったところ、A社で労働時間を2時間延長して5時間、B社で労働時間を1時間延長して4時間働いたとします。
この場合、A社では2時間の労働時間の延長がありますが、A社での労働を終えた時点でB社の所定労働時間と合算しても、法定労働時間の範囲に収まります。
そのため、A社は、割増賃金の支払義務を負いません。
しかし、B社は、所定労働時間を超える労働をさせた結果、法定労働時間を超えるに至っていますので、割増賃金の支払義務を負うこととなります。

以上から、本業・副業いずれの事業主においても、それぞれの労働条件を把握しておく必要があります。

4 残業代の計算方法

従業員が副業をしている場合の残業代(割増賃金)は、当該従業員が勤務しているすべての勤務先での労働時間を通算し、割増率の判定と残業代の計算を行います。

【割増率】
時間外労働:25%(月60時間以上の残業は50%)
休日労働:35%
深夜労働:25%(深夜かつ時間外は50%)

割増賃金の計算に関するその他の事項は、一般的な残業代計算と基本的には変わりません。

5 弁護士にご相談ください

以上のとおり、従業員の副業には、残業代(割増賃金)の問題が発生することがあります。

従業員の副業の問題について、お悩みの企業様がいらっしゃいましたら、労務問題の経験が豊富な当事務所にご相談いただければと存じます。

【関連コラム】
●副業禁止に違反した従業員に対する懲戒処分や解雇について

記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2024年11月29日

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