はじめに
企業・法人における不祥事として、従業員・役員による刑事事件が挙げられます。
従業員・役員が刑事事件を起こした場合には、企業・法人としては、その従業員・役員に対する処分を検討するケースが多いでしょう。
一方で、企業・法人としては、刑事事件を起こした従業員・役員の雇用・委任を継続し、刑事手続への対応を支援する場合や、企業・法人が両罰規定による処罰の対象となる場合など、刑事手続への対応が必要となることもあります。
このページでは、従業員・役員による刑事事件が発生した場合の対応について、ご説明させていただきます。
なお、このページでは、従業員・役員が企業・法人を被害者とする犯罪以外の刑事事件を起こした場合を想定しています。
従業員が企業・法人の売上金や物品を窃盗・横領した場合の対応については、次のリンク先ページをご覧ください。
従業員・役員に対する処分
従業員が刑事事件で逮捕・勾留されることがあります。
このとき、従業員が逮捕・勾留されただけで、直ちに解雇に踏み切ることにはリスクがあります。
犯罪事実が比較的軽微である場合などには、後々不当解雇をめぐるトラブルとなるおそれがあるため、注意する必要があります。
また、犯罪事実が重大で解雇が相当と判断される場合であっても、法律上は、有罪判決が確定するまでは無罪の推定が働くため、まずは本人と面会して、犯罪事実に間違いがないかどうかを確認する必要があります。
そして、解雇をする場合には、犯罪事実に間違いがないことの一筆を書かせたうえで、解雇通知書を交付するという手順を踏むべきです。
不当解雇のリスクを回避する観点からは、解雇まではせずに懲戒処分で済ませるか、退職勧奨(自主退職を求めること)をして自主退職させるのが無難なケースもあるでしょう。
いずれにしても、弁護士にご相談いただいたうえで、慎重に対応されることをお勧めいたします。
役員による刑事事件の事案で、その役員の解任を考える場合にも、基本的な考え方は同様です。
役員の解任は、株主総会の決議で行うことができますが、正当な理由なく解任した場合には、企業・法人は損害賠償責任を負うことになります。
刑事手続への対応
企業・法人としては、刑事事件を起こした従業員・役員の雇用・委任を継続し、刑事手続への対応を支援するケースがあります。
また、企業・法人が両罰規定による処罰の対象となる場合には、刑事手続への対応が必要となります。
刑事手続への対応については、弁護士のサポートが不可欠です。
企業・法人の立場として無罪を主張していく場合には、処罰の根拠とする法令の解釈や事実関係の有無・評価について、慎重に調査・検討したうえで刑事手続に臨む必要があります。
あるいは、犯罪事実を争わずに、不起訴や略式命令(罰金)で終わらせることや、起訴された場合に減刑を求めていく対応を取るべきケースもあります。
このような場合には、被害者がいる犯罪では示談交渉や被害弁償、逮捕・勾留されている事案では勾留決定に対する準抗告や保釈請求、親族等に今後の監督を誓約してもらうことなど、弁護士が様々な弁護活動を展開することが考えられます。
弁護士にご相談ください
以上のように、従業員・役員による刑事事件が発生した場合には、従業員・役員に対する処分や刑事手続について、迅速・的確な対応をしていく必要があります。
法的に複雑・困難な検討・判断を伴うケースも多々ありますので、従業員・役員による刑事事件でお困りの企業・法人様は、まずは法律の専門家である弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
不祥事対応についてはこちらもご覧下さい
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