はじめに
請負契約とは、請負人が仕事の完成を約束し、注文者が仕事の完成に対する報酬の支払を約束することを内容とする契約です。
請負契約の典型的なものは、工事請負契約です。
工事請負契約において、トラブル発生を未然に防止し、トラブル発生時に不測の損失を回避するためには、事前に工事請負契約書を取り交わしておくことが大切です。
この点、工事請負契約書については、様々な標準約款(国土交通省)やひな型が公表されていますが、必ずしも個々の取引の実情に適合するものではなく、自社の利益が守られる形で作成されているわけではありません。
標準約款やひな型をそのまま使用すると、不測の損失を被るおそれがありますので、工事請負契約書の内容については、十分な検討と確認が必要です。
このページでは、工事請負契約書のチェック・作成のポイントについて、ご説明させていただきます。
工事請負契約書のポイント
工事の内容・工期・請負代金
工事請負契約書では、契約の基礎をなす工事の内容・工期・請負代金を定める条項が必須となります。
工事の内容については、設計図・仕様書などを工事請負契約書に添付し、特定するとよいでしょう。
【条項例】
工事の内容
注文者は、請負人に対し、次の工事(以下、「本件工事」という。)を注文し、請負人はこれを請け負う。
(工事の内容)
工事名 〇〇〇〇工事
工事場所 青森県〇〇市〇〇〇〇
工事内容 添付の設計図及び仕様書のとおり
工期
本件工事の工期は、次のとおりとする。
(工期)
着手 〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
完成 〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
引渡し 〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(工事を施工しない日)
〇〇〇〇
(工事を施工しない時間帯)
〇〇〇〇
請負代金
(1)本件工事の請負代金は、〇〇〇〇万円(消費税別)とする。
(2)注文者は、請負人に対し、前項の請負代金を次のとおり分割し、請負人が指定する預金口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は、注文者の負担とする。
(支払条件)
本契約の締結日から〇日以内 〇〇〇〇万円(消費税別)
目的物の引渡しから〇日以内 〇〇〇〇万円(消費税別)
工事・工期の変更
工事請負契約では、契約書を取り交わしたあとに工事・工期の変更が必要となることも少なくありません。
そのため、工事・工期の変更に関する条項を置く必要があります。
【条項例】
(1)注文者は、必要があるときは、工事の追加・減少・変更又は工期の短縮・延長・変更をすることができるものとし、請負人はこれに異議を述べない。ただし、本件工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とするものであってはならない。
(2)請負人は、正当な理由があるときは、注文者に対し、工期の延長を求めることができるものとし、延長日数は注文者及び請負人が協議して定める。
請負代金の変更
工事・工期の変更などの事情により、請負代金の変更が必要となることがあります。
そのため、請負代金の変更に関する条項を設けるべきです。
【条項例】
注文者及び請負人は、次の各号のいずれかに該当したときは、相手方に対し、必要と認められる請負代金の変更を求めることができるものとし、変更後の請負代金の額は注文者及び請負人が協議して定める。
①工事の追加・減少・変更又は工期の短縮・延長・変更があったとき
②予期することのできない法令の制定・改廃、物価・賃金等の経済事情の激変、その他の事情の変更により、請負代金が明らかに適当でないと認められるとき
損害の防止・第三者の損害
工事の施工により、目的物の既製部分、工事材料、工事設備、工事機器又は近接する工作物もしくは第三者に対し、損害を与える事態も想定されます。
そのため、損害の防止措置および費用負担に関する条項を設けるとともに、第三者に損害を与えた場合の責任の所在に関する条項を置くようにしましょう。
【条項例】
損害の防止
請負人は、目的物の引渡しまで、目的物の既製部分、工事材料、工事設備、工事機器又は近接する工作物もしくは第三者に対し、損害を与えることを防止するために、必要な措置を講じるものとする。ただし、この措置に要する費用は、請負人の負担とする。
第三者の損害
本件工事に起因して第三者に損害を与えたときは、請負人の責任と負担によりその処理解決にあたり、損害を賠償するものとする。ただし、その損害の発生が注文者の責に帰すべき事由によるときは、注文者の責任と負担によりその処理解決にあたり、損害を賠償するものとする。
建設業法との関係
建設業法19条では、建設工事における請負契約の当事者に対し、特定の事項(法定記載事項)を盛り込んだ工事請負契約書の作成を義務付けています。
法定記載事項は建設業法19条1項に列挙されていますので、必要な条項に漏れがないように注意しなければなりません。
【建設業法19条1項による法定記載事項】
①工事内容
②請負代金の額
③工事着手の時期及び工事完成の時期
④工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
⑤請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑪注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮契約に関する紛争の解決方法
また、建設業法19条の5では著しく短い工期が禁止されており、工期の合理性にも注意を払う必要があります。
工事請負契約書のひな型
民間の企業間における建築以外の小規模な工事を想定した工事請負契約書のひな型を、以下でご紹介させていただきます。
なお、以下でご紹介させていただくものは、あくまでもサンプルです。
取引の内容や契約の背景事情、契約当事者の要望等に合わせた修正が必要となるのが通常ですので、当事務所の弁護士にご相談いただければと存じます。
弁護士にご相談ください
以上のほかにも、工事請負契約書には、注意すべきポイントが多々あります。
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