はじめに
コンサルティング業務とは、企業・法人などに対し、経営課題に関する解決策を示し、事業の発展を支援する業務のことを言います。
コンサルティング業務は、実際にコンサルティングを受けてみなければ、業務の質が分からないという特徴があります。
そのため、「コンサルタントを頼んだが、期待はずれであった」となるケースも多く、トラブルの発生が後を絶ちません。
コンサルティング契約書をチェック・作成するにあたっては、トラブル予防の観点から慎重に内容を検討することが大切です。
コンサルティング契約書のポイント
業務内容
コンサルティング契約書では、コンサルティング業務の範囲および遂行方法を明示する必要があります。
どのような業務をどのような方法で遂行するのかについて、契約当事者間で認識が食い違うと、トラブルを招くおそれがありますので、注意が必要です。
コンサルティング業務の範囲については、例えば、WEBサイトを利用した集客に関するコンサルティングであれば、①WEBサイトを利用した集客に関する助言、②集客を目的とするWEBサイトの企画、③集客を目的とするWEBサイトのアクセス解析、④集客を目的とするWEBサイトの運用・改善に関する助言、⑤インターネット広告の出稿・運用・改善に関する助言、⑥これらに関連する相談に対する助言などのように、できる限り個別具体的に明記することをお勧めいたします。
別料金がかかるケースがあれば、それを明記することも必要でしょう。
また、コンサルティング業務の遂行方法については、例えば、訪問・面談によるミーティングを行うとか、訪問・面談は行わずに電子メール・チャットツールを利用してコンサルティングを実施するなどの取り決めが考えられます。
「毎月〇回」や「毎月〇時間以内」といった上限を設けること、担当者を指定すること、コンサルティング・レポートを提出することを定めることなども考えられます。
【条項例】
第〇条(委託業務の内容)
本契約において、乙(受託者)が甲(委託者)に対して提供する業務(委託業務)は、次のとおりとする。
(1)WEBサイトを利用した集客に関する助言
(2)集客を目的とするWEBサイトの企画
(3)集客を目的とするWEBサイトのアクセス解析
(4)集客を目的とするWEBサイトの運用・改善に関する助言
(5)インターネット広告の出稿・運用・改善に関する助言
(6)これらに関連する相談に対する助言
契約期間
コンサルティング契約は、一定の期間にわたる支援を前提とする契約であることが通常です。
そこで、コンサルティング契約書には、契約期間を規定する条項を設ける必要があります。
契約期間満了後の自動更新を前提とする場合には、自動更新の旨を明記するようにしましょう。
また、コンサルティングを受ける側としては、契約期間が1年以上の長期にわたる場合などには、中途解約ができる旨の条項を入れておくと安心です。
一方で、コンサルティングをする側としては、契約初期段階で多大な労力がかかる場合や、ある程度の期間継続しないと成果が期待できない場合などには、中途解約を禁止・制限する旨の条項とすることを検討しましょう。
コンサルティング契約では、中途解約をめぐるトラブルが多発しているため、契約書において中途解約の可否を明記するとともに、契約当事者間での認識の一致に努めることが大切です。
【条項例】
第〇条(契約の期間)
本契約の有効期間は、本契約の締結日より1年間とする。ただし、契約期間満了の1か月前までに甲または乙からの申し出がなければ、1年間自動延長されるものとし、以降も同様とする。
第〇条(中途解約)※中途解約を認める場合
甲および乙は、〇か月前までに相手方に書面をもって通知することにより、本契約を中途解約することができる。
第〇条(中途解約の禁止)※中途解約を禁止する場合
甲および乙は、本契約期間中においては、第〇条に定める解除事由に該当しない限り、本契約を中途解約することができないものとする。
報酬
コンサルティング契約書では、報酬の金額や支払時期・支払方法について、定めを置くことが必要です。
例えば、「月額〇万円」、「当月分を当月末日までに指定口座に振り込む」などの取り決めが考えられます。
また、利益額や売上額に対して「〇%」と定めること、売上増や利益増に対して増加額の「〇%」と定めること、「1時間当たり〇万円」などのタイムチャージ制を取ることなどが考えられます。
【条項例】
第〇条(報酬)
甲が乙に支払う報酬は、月額〇〇万円(税別)とする。乙は、当月分の報酬を甲に請求し、甲は、当月の末日までに、乙指定の口座に振り込む方法により支払うものとする。ただし、振込手数料は、甲の負担とする。
知的財産
コンサルティングの過程において、著作権などの知的財産が発生することがあります。
コンサルティング契約書では、このような知的財産の帰属について、契約当事者のどちらに帰属させるのかを定めるようにしましょう。
コンサルティング契約において、知的財産をめぐるトラブルが発生する例もありますので、ご注意いただければと思います。
【条項例】
第〇条(知的財産の帰属)※委託者に知的財産を帰属させる場合
委託業務の過程で作成された著作物の著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)、および委託業務の過程で生じた発明その他の知的財産またはノウハウ等に係る知的財産権は、すべて甲に帰属するものとする。乙は甲に対して前記著作物について著作者人格権を行使しないものとする。
第〇条(知的財産の帰属)※委託者に知的財産を帰属させる場合
1 委託業務の過程で作成された本件成果物および本件業務の遂行に伴って生じた知的財産(本件成果物等)に関する著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)は、甲または第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、乙に帰属する。
2 甲および乙は、本契約に従った本件成果物等の利用について、他の当事者および正当に権利を取得または承継した第三者に対して、著作者人格権を行使しないものとする。
禁止事項・競業避止義務
コンサルティング業務における禁止事項があれば、その定めを置きます。
例えば、コンサルタントが同業他社にもコンサルティングサービスを提供することを禁止する、などの条項が考えられます。
【条項例】
第〇条(禁止事項・競業避止義務)
乙は、本契約の期間中、甲と同一または類似の業種を営む事業者(ただし、青森県内に事業所が存在する法人または個人事業主に限る)に対し、本契約の委託業務と同一または類似のコンサルティング業務を提供してはならない。
秘密保持
コンサルティングの過程において、契約当事者間で技術上や営業上の秘密の開示を伴うことがあります。
このような場合には、コンサルティング契約書の規定に、コンサルティングの過程で知り得た技術上や営業上の秘密について、第三者に対して無断で開示または漏洩することや、コンサルティング契約の目的外で使用することを禁止する旨の条項を置くことが必要です。
また、秘密の保持に関する条項については、コンサルティング契約書とは別途、秘密保持契約書を作成することも、多く行われています。
詳しくは、「秘密保持契約書」のページをご覧ください。
【条項例】
第〇条(秘密保持義務)
甲または乙は、相手方の秘密情報を適切に管理し、本契約の遂行以外の目的のために使用してはならず、正当な理由なく第三者に漏えいしてはならない。
弁護士にご相談ください
以上のほかにも、コンサルティング契約書には、注意すべきポイントが多々あります。
契約書のチェック・作成については、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
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