解決の方法

ネットでの誹謗中傷や風評被害に遭った場合、法的にもいくつかの対応をとることができます。
具体的には、削除請求、発信者情報開示請求、発信者情報開示命令、損害賠償請求、刑事告訴という対応を検討することになります。

削除請求

削除請求とは、問題となる投稿や書込みを削除してもらうように求めることを言います。
インターネットの特徴として、インターネット上にある情報は不特定多数の人物がアクセスすることができる状態にあり、一度注目を浴びれば一瞬で世界中に拡散されてしまうという特徴があります。
そのため、何か問題がある投稿がなされた場合には、その投稿が瞬時に世界中に拡散されてしまい、爆発的に風評被害が拡大してしまう危険があります。
そのような風評被害拡大を防ぐためにも、まずは問題となる投稿自体の削除請求を検討することが必要となります。

削除請求の方法にも、任意の削除を求める方法や、裁判所の手続を利用する方法などいくつかの種類があります。

任意の削除を求める方法としては、問題となる投稿を行った投稿者に対して削除を求める方法が考えられます。
もっとも、投稿者が任意の削除に応じない場合や、匿名のため投稿者を特定できない場合には、別の方法を考えなければなりません。
そのような場合には、問題となる投稿の存在するウェブサイトを管理しているコンテンツプロバイダに対して、削除を求める方法が考えられます。
もっとも、コンテンツプロバイダも簡単には任意の削除には応じないこともあります。
そのため、コンテンツプロバイダが削除に応じない場合や、削除に応じないことが見込まれる場合には、裁判所の手続を利用して削除請求をしていく必要があります。

裁判所の手続を利用して削除請求をする場合には、民事保全手続(権利を暫定的に保全する手続)を利用し、問題となる投稿の仮の削除を求める仮処分を申し立てることになります。
このようなインターネット上での誹謗中傷や風評被害にかかる問題については、緊急性の高い事案であるため、通常の訴訟手続ではなく、比較的迅速に手続が進められる保全手続が利用されます。
保全手続では、名誉権やプライバシー権などの人格権が違法に侵害されたものと認められると、裁判所から仮の削除を命じる仮処分決定が出されることになります。
この仮処分決定が出された場合には、ほとんどのコンテンツプロバイダは削除に応じます。

発信者情報開示請求

発信者情報開示請求とは、問題となる投稿を行った投稿者を特定するため、プロバイダ業者に対して、投稿者に関する情報の開示を求めていくことを言います。
インターネット上の投稿は匿名でなされることも多く、そのような場合には、投稿者に対して法的な責任を追及していくためには、その投稿者の氏名や住所などの情報を特定していく必要があります。
そのためにも、発信者情報開示請求を進めていく必要があります。

発信者情報開示請求により、問題となる投稿を行った投稿者の氏名や住所などの情報にたどり着くまでには、大きく分けて2回にわたる発信者情報の開示請求の手順を踏む必要があります。
まずは、問題となる投稿の存在するウェブサイトを管理しているコンテンツプロバイダに対して、問題となる投稿を行った者のIPアドレスとその情報が送信された時刻(タイムスタンプ)の開示を求める必要があります。
IPアドレスとタイムスタンプが開示されたら、その情報をもとに、投稿者が利用しているアクセスプロパイダを特定することができますので、今度は、アクセスプロバイダに対して、その投稿者に関する氏名や住所などの情報の開示を求めることになります。
ここまで開示の請求を進めることで、ようやく、投稿者を特定することができます。

以上のような発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法という法律に基づいて、認められているものです。
法律上、発信者情報開示請求が認められるためには、「権利が侵害されたことが明らかである」といえることが必要とされています。
ここでいう権利とは、名誉権やプライバシー権、著作権、商標権など法的に保護される権利のことを指します。
プロバイダ業者は、権利侵害が明らかであると認められる場合には、情報を開示しなければならないということになっています。

以上のような発信者情報開示請求は、任意での開示請求も可能ですが、プロバイダ業者は権利が侵害されたことが明らかであるとは言えないとして、任意での開示に応じないことも多くあります。
そのように任意での開示に応じない場合には、裁判所の手続を利用して、開示を請求していく必要があります。
先ほども述べたとおり、最終的に投稿者に関する情報までたどり着くには、大きく分けて2回の発信者情報開示請求を行う必要がありますので、場合によっては、2回の裁判手続を経る必要があることも想定されます。

発信者情報開示命令

発信者情報開示命令とは、2022年10月1日に施行された改正プロバイダ責任制限法により作られた制度であり、プロバイダ業者に対して、投稿者に関する情報の開示を求めていく手続のことを言います。

発信者情報開示請求はコンテンツプロバイダに対する開示請求とアクセスプロバイダに対する開示請求の2段階の手続ですが、発信者情報開示命令では一体的な審理により迅速に開示を受けられるという特徴があります。

損害賠償請求・刑事告訴

誹謗中傷や、風評被害にかかる投稿を行った投稿者が特定できた場合には、その投稿者に対して、法的責任を追及することが考えられます。
法的責任の追及にあたっては、民事上の損害賠償請求を行う方法と、刑事上の責任を追及する方法の2通りがあります。

民事上の責任追及としては、問題となる投稿によって被った損害の賠償を求めていくことになります。
損害賠償請求では、主に誹謗中傷や風評被害によって被った精神的苦痛に対する慰謝料を求めていくことになります。
また、裁判例では、投稿者の特定を行うために要した費用を損害と認めて、その賠償を認めたケースもあります。
慰謝料の金額は、投稿の内容や実際に受けた影響などの事情によって変動しますが、これまでの裁判例などを踏まえると100万円程度が上限とされているような印象を受けます。
そのため、訴訟となった場合であっても、そこまでの高額な賠償までは認められないのが現状です。

刑事上の責任追及としては、捜査機関に対して告訴を行い、問題となる投稿を行った投稿者の処罰を求めることが考えられます。
刑事上の処罰を求めるためには、問題となる投稿を行ったことが犯罪に該当することが必要となります。
誹謗中傷や風評被害の問題が生じる投稿については、例えば、脅迫罪や名誉棄損罪、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪、信用棄損罪などの犯罪に当たらないかどうかを検討することになります。
犯罪に該当する可能性がある場合には、捜査機関に対して告訴を行うことになります。
告訴を行うためには、告訴状を作成し、問題となる投稿が犯罪に該当するという事実を具体的に記載した上で、その事実を裏付ける根拠となる資料を証拠として添付して、捜査機関に対して提出する必要があります。
捜査機関が告訴を受理すれば、その後、捜査が進められ、最終的には、投稿者に刑事処罰が下される可能性があります。

>>>ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除に関する弁護士費用は、こちらをご覧ください。

ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除についてはこちらもご覧下さい

ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除
●ネット誹謗中傷・風評被害の解決方法
●ネット誹謗中傷・風評被害に対する削除請求
●ネット誹謗中傷・風評被害に対する発信者情報開示請求
●発信者情報開示請求の流れと必要期間および重要ポイント
●爆サイに対する削除請求・発信者情報開示請求の手続
●X(旧 Twitter)に対する削除請求・発信者情報開示請求の手続
●Facebookに対する削除請求・発信者情報開示請求の手続
●ネット誹謗中傷・風評被害に対する発信者情報開示命令
●ネット誹謗中傷・風評被害に対する損害賠償請求・刑事告訴
●ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除を弁護士に相談・依頼すべき理由