仮差押えとは
任意の交渉による債権回収が難しい場合、最終的には訴訟を提起して強制執行(相手方の財産の差押え)による債権回収を図ることとなります。
しかし、訴訟手続には相応の時間がかかることが想定され、その間に相手方の財産が処分・隠匿されてしまうおそれがあります。
そうなると、支払を命じる判決を得ても、差し押さえる財産がなくなっているという事態に陥ってしまいます。
そのような事態を避けるために、裁判所に申立てをすることで、相手方が保有する財産を暫定的に差し押さえ、処分や隠匿ができないように保全する仮差押えという手続を取ることが考えられます。
相手方の財産への仮差押えを行ったあと、訴訟手続や強制執行を経て債権回収を実現するというシナリオがありますが、仮差押えを打たれたことで相手方が観念し、任意の支払に応じてくるというケースも多々あります。
仮差押えの要件
仮差押えが認められるためには、①被保全権利があること、②保全の必要性があることが要件となります。
①被保全権利
被保全権利とは、仮差押えによって保全される権利のことを言います。
具体的には、自社が相手方に対して債権を有することです。
②保全の必要性
保全の必要性とは、仮差押えをしなければ、将来的に支払を命じる判決を得ても、強制執行ができなくなるおそれがあることを言います。
相手方に十分な資力があり、将来的な支払能力に不安がないような状態であれば、保全の必要性は認められません。
仮差押えを認めてもらうためには、相手方の財産状況が悪化していることなど、訴訟手続の解決を待っていれば、財産が処分・隠匿されてしまうおそれがあることを、具体的に示す必要があります。
仮差押えの対象
相手方の財産であれば、基本的に何であっても仮差押えの対象となります。
具体的には、不動産、機械・車両や在庫商品などの動産、預金や売掛債権といった債権が考えられます。
ただし、動産や債権に対して仮差押えをすることは、相手方への負担・影響が大きいと言えます。
相手方が事業者である場合などには、相手方の倒産への引き金となってしまうこともあり得ます。
そのため、仮差押えの対象としては、不動産のように処分を禁止されても相手方への負担・影響が少ない財産を選択するのが原則です。
例えば、相手方が事業者であれば、預金を仮差押えすることで金融機関が相手方の財務悪化を察知し、融資の回収に走るおそれがありますし、売掛債権を仮差押えすることで相手方の信用失墜を来し、取引が打ち切られるおそれがあります。
その結果、相手方の事業の継続へ深刻な悪影響を与え、倒産へと導くことで債権回収の失敗につながることがあり得るのです。
また、相手方が被事業者であれば、預金を仮差押えすることで生活に困難を来たすことも考えられますので、不動産のような財産があるのであれば、先にそちらの仮差押えを検討するべきであると裁判官から指摘されるでしょう。
このように、仮差押えの対象となる財産は、慎重に検討しなければなりません。
仮差押えの手続
仮差押えの申立て
仮差押えの手続は、裁判所に対して申立書および証拠資料等を提出することで開始されます。
申立書には、仮差押えの対象とする財産、仮差押えの要件である被保全権利と保全の必要性などを記載し、これらを裏付ける証拠資料を提出します。
被保全権利を裏付ける証拠資料としては、契約書、納品書、受領書、請求書などが考えられます。
保全の必要性を裏付ける証拠資料としては、督促状、FAX、メールなどのほかに、相手方の信用状態に関する調査書、報告書、陳述書などが考えられます。
裁判官との面接
仮差押えの申立てが受理されると、裁判官との面接の日程が組まれます。
裁判官との面接では、申立書に記載された事実関係や証拠資料の内容について、裁判官からの質問が行われます。
また、裁判官が必要と考えるときは、追加の証拠資料を提出するように指示が出されることがあります。
裁判官と直接話し合って説得するための機会であり、口頭で説明する方が分かりやすいこともあるため、丁寧に対応していくことが大切です。
仮差押えを認めるに当たっての裁判官の問題意識が示されることもありますので、裁判官との面接への対応は非常に重要です。
なお、裁判官との面接は、省略されることがあります。
担保金(保証金)の供託
仮差押えを認める際には、担保金(保証金)を法務局で供託することを求められるのが通常です。
仮差押えは、相手方の反論を聴取せずに、自社の主張だけを聞いて裁判所が決定するものです。
仮差押えによって相手方は対象財産の処分を禁止されるという不利益を被ることになるのであり、もし不適切な仮差押えによって相手方に損害が発生した場合に、その損害をカバーするための担保として、担保金の供託を求められるのです。
担保金の額は、仮差押えの対象となる財産の価値の10%~30%程度の範囲で、相手方が被る不利益の程度や被保全権利の存在の確実性などを考慮して、裁判官が決定します。
法務局で供託した担保金は、不適切な仮差押えとは言えないのであれば、最終的には全額返還されます。
保全の決定
担保金(保証金)の供託が完了すると、裁判官が保全の決定を出し、仮差押えが発令されます。
弁護士にご相談ください
仮差押えの手続を適切に遂行するためには、専門的な知識と経験が不可欠です。
また、相手方の財産の処分・隠匿を回避するために、素早く手続を進めていくことが必要となります。
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