動産の差押えとは
動産の差押えとは、裁判所の執行官が相手方の店舗や自宅に立ち入り、そこで発見した相手方の動産(不動産以外の物品)を差し押さえて、競売にかけて現金化し、そこから債権を回収する強制執行の手続です。
動産の差押えは、不動産の差押えと比較して、手続が容易であり、費用も低額です。
また、動産の差押えの手続を行うことで、相手方に心理的なプレッシャーを与え、任意の支払に応じさせることができるケースもあります。
一方で、相手方が高価な動産を所有していなければ、十分な金額の回収を実現することはできません。
動産の差押えの対象
動産の差押えは、什器・備品、機械類、在庫商品、宝石・貴金属、家財道具、電化製品、現金、有価証券などが対象となります。
ただし、自動車、バイク、船舶、航空機については、「自動車執行」などの別の強制執行の手続を取る必要があります。
また、次のような動産は、法律上、差し押さえることができません。
□債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳および建具
□債務者等の1か月間の生活に必要な食料及び燃料
□66万円までの現金
□主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜およびその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
□主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕または養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさおよび稚魚その他これに類する水産物
□技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的または肉体的な労働により職業または営業に従事する者のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く)
□実印その他の印で職業または生活に欠くことができないもの
□仏像、位牌その他礼拝または祭祀に直接供するため欠くことができない物
□債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿およびこれらに類する書類
□債務者またはその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
□債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類および器具
□発明または著作に係る物で、まだ公表していないもの
□債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
□建物その他の工作物について、災害の防止または保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械または器具、避難器具その他の備品
動産の差押えの手続の流れ
①動産の差押えの申立て
相手方の動産を差し押さえるためには、まずは裁判所の執行官に動産の差押えの申立てを行います。
動産の差押えの申立てを行うためには、訴訟手続で支払を命じる判決を得るとか、支払を約束する訴訟上の和解が成立するなど、「債務名義」と言って、債権について差押えを可能とする公的な証明を受けていることが必要です。
そのため、訴訟などの手続を経ずにいきなり相手方の動産を差し押さえることはできません。
動産の差押えの申立ては、所定の事項を記載した申立書を作成し、債務名義(判決書・和解調書など債権について公的に証明する文書)などの必要書類を添付して、裁判所の執行官に提出することで行います。
②執行官との面談
動産の差押えの申立てが受理されると、裁判所で執行官との面談が行われます。
執行官との面談の場で、動産の差押えを実施する日時や当日の待ち合わせ場所などを決めるとともに、当日の段取りに関する打ち合わせが行われます。
③動産の差押えの実施
動産の差押えを実施する当日、立会を希望する債権者は現場周辺で待ち合わせ、執行官と一緒に差押えの現場に向かいます。
債権者は、動産の差押えに立ち会うことはできますが、建物の玄関から先には執行官しか立ち入ることができません。
執行官は、建物内に立ち入って、動産のうちで財産価値があって換金できそうなものを探し、差し押さえていきます。
なお、執行官が相手方を外に連れてきて、債権者と話をさせるケースが多いです。
その場合には、相手方に対して支払を督促するとよいでしょう。
④競売・配当
差し押さえた動産は、執行官が競売によって売却し、換金します。
そして、債権者は、換金額をもって債権の回収を得ることができます。
ここで、競売の実施にあたっては、債権者自身が専門業者を連れてきて、差し押さえた動産を購入させ、その代金を債権の回収にあてる方法もあります。
また、差し押さえた動産を債権者自身が購入し、その代金を回収すべき債権と相殺することで支払う方法もあります。
なお、現金を差し押さえた場合には、直接現金で支払を受けることができます。
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