商品の引き揚げ
自社が相手方へ商品を販売したあと、相手方が代金の支払をしない場合には、商品を返してもらうことで、売買をなかった状態に戻し、損失を回避することができます。
ただし、商品を引き揚げるにあたっては、いくつかの注意点があります。
まず、自社が相手方へ商品を販売した以上は、商品の所有権は相手方が有するのが原則です。
相手方から代金の支払がない場合であっても、自社としては基本的に代金の支払を請求できるにとどまり、直ちに商品の引き揚げが認められるわけではありません。
したがって、商品の引き揚げを行うためには、法的な根拠が必要です。
また、商品の引き揚げを行う法的根拠がある場合であっても、実際に相手方のもとから商品を引き揚げる際には、相手方の承諾が必要です。
商品の引き揚げの法的根拠
商品を引き揚げるための法的根拠としては、商品の売買契約を解除することが考えられます。
商品の売買契約が解除されると、取引先は商品の所有権を喪失し、自社へ返還しなければならなくなります。
売買契約書には、契約上の義務を履行しないとき、差押えなどの強制執行を受けたとき、自己破産など清算の手続が行われたときなどには、契約を解除することができると定められていることが多いです。
商品の売買契約の解除以外にも、売買契約上、所有権留保の合意がある場合には、所有権留保の実行として、商品の引き揚げを行うことができます。
所有権留保とは、相手方から代金が支払われるまでの間は、商品の所有権を自社に留めるという内容の契約条項です。
また、相手方の協力が得られるのであれば、商品の売買契約を合意解約することや、商品を返品処理としてもらうことで、商品の引き揚げの法的根拠が得られます。
相手方の承諾
商品の引き揚げを行う法的根拠がある場合であっても、相手方に無断で商品を持ち出すことは許されません。
自社に商品の所有権があるとしても、それを占有(保管)しているのは相手方であり、法律上、そのような占有は保護されるものとされています。
したがって、相手方のもとにある商品を引き揚げる際には、その所有権が自社にある場合であっても、相手方の承諾を得る必要があるのです。
もし相手方の承諾なく勝手に商品を引き揚げた場合には、住居侵入罪(刑法130条)、窃盗罪(刑法235条)に該当するおそれがあります。
そうなると、犯罪行為として捜査の対象となり、起訴されることもあり得ますので、十分にご注意ください。
相手方の承諾を得る際には、相手方に承諾書へサインさせるなど、承諾の事実を証拠として残しておくのが安全です。
相手方が商品の引き揚げを承諾しない場合の対応
相手方が商品の引き揚げに応じない場合には、自社の商品が引き続き相手方の管理下に置かれることとなります。
そうすると、取引先が商品を転売してしまうとか、他の債権者に対して代物弁済として引き渡してしまうことなどが想定されます。
そのため、商品が自社の所有物であって相手方が勝手に処分できないということを表示するために、商品に自社所有であることを示すタグやシールを貼るなどの対策を検討するべきです。
また、処分禁止の仮処分(売却などの処分を禁止する裁判所の命令)や占有移転禁止の仮処分(商品の移動を禁止する裁判所の命令)を裁判所に申し立てることも検討します。
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