債権者は、債務者が任意の支払をしない場合、通常、裁判による勝訴判決を得て、その後、その判決に基づいて債務者の責任財産(強制執行の対象となる債務者の財産)へ強制執行をすることで、初めて債権を回収することができます。

具体例を挙げて説明します。

債権者Aが債務者Bに対して売掛債権200万円(債権X)を有しており、債務者Bが第三債務者Cに対して売掛債権300万円(債権Y)を有しているとします。

この場合、債権者Aは、債権Xを回収するために債務者Bに対して裁判を起こし、勝訴判決を得てから債権Yの債権差押の強制執行をすることで債権回収をすることになります。
もっとも、債務者Bが債権Yを全く管理していない場合はどうでしょうか?
債権Yは5年間で消滅時効が成立します。
そのため、債務者Bに他にめぼしい財産がない場合、債権Yが消滅時効にかかると、債権者Aが債権Xを有し、その勝訴判決を得ていたとしても、債権回収をすることができなくなってしまいます。
このような場合に備え、民法上では、債権者が債務者に代わり、債務者の権利を保全する代わりに行使することができる方法として、債権者代位権という制度を設けています。

債権者代位権の要件

1 被保全債権の存在

まずは、当然ですが、被保全債権(上の例でいうところの債権X)が存在する必要があります。
もっとも、もともと債権者代位権は、債務者の財産を維持することを目的としており、債権者が債務者の代わりに取り立てを行う制度として想定されていたものであるため、被保全債権は、原則として、金銭債権である必要があります(被保全債権が登記移転請求権の場合などにも、例外的に認められることがありますが、ここでは説明を省略いたします)。

2 被保全債権の履行期の到来

債権者代位権は、強制執行の準備的な意味合いのある制度であるため、執行することができる状態になくてはなりません。
そのため、債務名義(判決書や和解調書など、裁判所が債権の存在を証明した文書)までは必要ありませんが、少なくとも被保全債権が弁済期に達している必要があります。
ただし、例外的に、債務者の権利がなくなる恐れがある場合には、被保全債権が弁済期に達していない場合であっても、これを防ぐために債権者代位権を行使することが認められます。

3 債務者の無資力

債権者代位権は、債務者の意思にかかわらず、その権利の行使に介入するという制度なので、債務者に十分な資力がある場合には認められません。
そのため、債権者代位権を行使するには、債務者の資力が十分でないために債権者が債権回収を完全に行うことができない状況でなければなりません。
具体的には、すべての債権者の債権額を合わせた金額が債務者の財産を超える状態にある必要があります。

4 債務者の権利不行使

債務者がすでに自己の権利を行使している場合には、債権者は債務者の責任財産に対して強制執行をすれば足り、債権者代位権を行使する必要がありません。
そのため、債権者代位権を行使するためには、債務者がまだ自己の権利を行使していない場合にのみ行うことができます。

債権者代位権の活用による債権回収

債権者は、第三債務者に対して、債務者を通さず、直接自分へ支払うように請求することができます。
これにより、被保全債権との間で相殺することができます(その結果、第三債務者の債務者に対する債務も債権者代位の範囲内で消滅します)。
また、債権者代位権を行使するためには、債権者が裁判をする必要はありません(第三債務者が支払いを拒絶したなどの理由により債権者が裁判をする場合には、債務者に対して訴訟告知をしなければなりません)。
ただし、債権者代位権を行使できるのは、債権者が債務者に対して有する債権が限度となります。
上の例では、債権者Aが債権者代位権を行使することができるのは200万円の範囲内となります(これに対し、債務者の第三債務者に対する権利が300万円相当の動産であった場合には、債権者は当該動産の引き渡しを受け、換価したあとに、被保全債権との間で相殺し、その差額を債務者に支払うことになります)。

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