運送業は、物流を通じて地域経済の発展に寄与するとともに、地域の人々の暮らしを支える重要な社会基盤産業です。
当事務所では、運送業を営む企業様からのご相談・ご依頼をいただくことが多く、運送業の事業運営に当たっては、様々な法的リスクが潜んでいると言えます。
このページでは、運送業を営む企業様向けに、運送業を取り巻く状況および法的リスクや、弁護士が法的リスクへの対策・対応として提供できる法的サービスについて、解説させていただきます。

運送業を取り巻く状況と法的リスク

複雑・多様な取引形態

運送業は、業務の性質上、多重下請・多重取引の複雑・多様な取引形態が取られることが少なくありません。
また、運送業における継続的取引として、運送委託契約という契約形態が取られることも多いでしょう。
このような運送業の特質に加えて、取引の内容を書面化せず、口約束で取引が行われることも少なくないため、運賃の金額や支払日、附帯業務の範囲などをめぐって、様々な法的トラブルが発生することが往々にしてあります。

人手不足時代と労務管理の問題

近年では、どの業界であっても人材確保が困難な時代となっていますが、運送業においては、労働者の肉体的・時間的な負担が大きい面があるため、人手不足の傾向が顕著であると言えます。
このような時代背景のもと、労働者側からの経営者側への発言力が強まる面が出てきており、近年の労働者側の権利意識の高まりから、未払い残業代やパワハラなどの法的トラブルも増加しています。
また、運送業では、多重下請や業務委託等が利用されることが多いですが、これらが偽装請負や偽装出向等に該当する場合には、行政指導や行政処分の対象となり、業績への悪影響も懸念されるため、十分に警戒しなければなりません。

長距離輸送・長時間労働と労働災害リスク

運送業では、特に長距離ドライバー等の長時間労働の常態化が指摘されており、一定程度、過労による精神障害や心疾患などの労働災害(労災)が発生するリスクが潜んでいると言えます。
労働災害が発生し、企業側に過失(落ち度)が認められる場合には、企業は民事責任(損害賠償請求)、刑事責任(業務上過失致死傷等)、行政責任(事業停止や車両停止)を問われるおそれがあります。
なお、損害賠償責任については、労災保険では賠償責任額に足りず、不足額が企業側の自己負担となる事案も少なくないため、注意が必要です。
企業側の自己負担額は、事案によっては、数千万円から1億円を超えることもあります。

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運送業における顧問弁護士の役割

取引関係に関する法的チェック

運送業では、多重下請・多重取引の複雑・多様な取引形態が取られることが多いのですが、法的トラブル防止の観点からは、契約書の取り交わしを徹底すること、そして、契約書の内容が適切かどうかについて、十分な事前チェックを行うことが重要です。
これは、運送委託契約という契約形態が取られる場合でも、同様です。
この点、法的トラブルが発生しない限りは問題にならないと考え、契約書の作成やチェックを積極的に行わない企業も少なくありません。
しかし、不測の事態が発生し、取引の相手方と揉めたときに、法的トラブルを回避したり、自社を過大なリスクから守ったりするのは、適正な内容が整備された契約書の存在です。
顧問弁護士を付けて、プロによる契約書のチェック・作成体制を構築することによって、安心して取引関係に臨んでいただくのがよいでしょう。

労務管理に関するサポート

近年増加している労務問題については、問題社員対応、解雇問題(不当解雇)、残業代請求、パワハラ、メンタルヘルス(うつ病等)など、様々な様相のものがあります。
就業規則や雇用契約書の見直しとともに、問題社員への退職勧奨や懲戒処分、固定残業代など残業代の発生を抑制する制度の活用、労働時間の管理、パワハラ事案への予防策・対応体制の構築、メンタルヘルス不調者の休職制度の整備・運用など、顧問弁護士のサポートのもとに、労務問題を防止するための労務管理の適正化を推進されることをお勧めいたします。
また、多重下請や業務委託等を利用している場合には、違法な偽装請負や偽装派遣に該当するものではないかについて、顧問弁護士にチェックを求めることも必要です。

労働災害への予防と対応

労働災害の予防については、労働安全衛生法や労働安全衛生規則を遵守し、適正な安全衛生管理を徹底することが必要です。
また、運送業に特有の労働時間等の規制として、改善基準告示等の遵守も求められます。
労働災害の予防の観点からは、顧問弁護士を安全衛生会議に出席させ、課題の洗い出しや解決策の検討を行うなどの活用方法も考えられます。
また、労働災害が発生した場合の損害賠償リスクに備えて、使用者賠償責任保険(労災保険の上乗せ保険)に加入することをお勧めします。
そして、使用者賠償責任保険では、労働災害が発生した場合に、自動車保険のように保険会社が示談交渉を代行してくれることはないため、普段から付き合いのある顧問弁護士に窓口対応を委託し、自社対応の負担を軽減する必要もあるでしょう(この点、使用者賠償責任保険では、企業側が弁護士に示談交渉や訴訟を依頼する場合の弁護士費用についても、保険会社が負担するという謳い文句を掲げていることが多いです。
しかし、実際には、弁護士費用の支出について、あらかじめ保険会社の同意・承認を得ることが条件とされており、保険会社がなかなか同意・承認をしてくれないために、弁護士を付けられずに自社対応の負担を強いられるという事案が多数見られます。
初期段階から弁護士が介入し、安心して対応を進めていくためには、やはり顧問弁護士を付けることをお勧めいたします)。
労災保険関係の諸手続や労基署調査への対応についても、顧問弁護士によるサポートが可能な領域です。

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顧問弁護士の活用をご検討ください

当事務所の弁護士は、これまでに、運送業を営む企業様から、取引上のトラブル、労務問題、労働災害など、様々な案件について、ご相談・ご依頼をいただいて参りました。
また、様々な企業・法人様の顧問弁護士に就任しており、充実した法的サービスを提供させていただいております。
法的リスクに関して不安をお持ちの企業様や、法的トラブルに巻き込まれてお困りの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、当事務所にご相談いただければと存じます。

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